最近、ビジネスを始めたんだけど、売上が1000万円を超えたあたりから法人化したほうがいいってよく聞くんだよね。でも、インボイス制度も始まったし、本当にメリットがあるのかよくわからなくて……。
確かに、昔は売上が1000万円を超えたら法人化するのが定番だったけど、今はインボイス制度の影響で少し変わってきてるんだ。消費税の免除も簡単には受けられなくなってきたし、タイミングを見計らう必要があるね。
そうなんだ。じゃあ、税金とか他のメリットを考えて、いつ法人化するのがベストか考えるべきってことかな?
そうそう。税率や社会保険のことも踏まえて、800万円を超えたあたりで法人化を検討するのが良いかも。それに、インボイス制度に対応する必要があるかも考慮するべきだよ。この辺りの詳しい話をこの記事でしっかり解説してるから、一緒に見てみよう!
はじめに
ビジネスを始める際に「個人事業主」として始めるべきか、それとも「株式会社」を設立するべきか、悩むことは多いでしょう。かつては、売上が1000万円を超えたら法人化することが大きなメリットとされていましたが、現在はインボイス制度の導入や税制の変化もあり、そのメリットが少し変わってきています。
この記事では、個人事業主と株式会社の違い、そしてそれぞれの選択肢におけるメリット・デメリットを整理し、特に所得が800万円を超えるタイミングでの法人化を検討する理由を中心に解説します。
個人事業主とは
個人事業主は、個人が一人でビジネスを運営する形態です。フリーランスや自営業者として、開業手続きが簡単で、初期費用が少なく、柔軟に事業を進められるのが特徴です。特に、小規模でスタートする場合は個人事業主として始めるのが一般的です。
個人事業主のメリット
- 開業が簡単: 開業届を税務署に提出するだけで事業を開始できます。
- 初期コストが低い: 株式会社の設立に比べて、開業時のコストが非常に少なく抑えられます。
- 自由度が高い: 自分一人で意思決定ができ、経営の柔軟性が高い。
個人事業主のデメリット
- 信用度が低い: 法人と比べて、取引先や金融機関からの信用が低く見られる場合があります。
- 無限責任: 事業の失敗や負債に対して個人資産で責任を負うため、リスクが高い。
- 累進課税: 所得が増えると税率も上がり、課税所得が高くなるほど税負担が増します。特に、課税所得が900万円を超えると税率が33%に跳ね上がります。
株式会社とは?
株式会社は法人格を持つため、事業そのものが独立した「人」として法的に扱われます。法人化することで、信用度が上がり、税制面でのメリットも受けられますが、運営にはコストや手間がかかる点も注意が必要です。
株式会社のメリット
- 信用度の向上: 法人化することで、取引先や金融機関からの信用が大きく上がります。大規模な取引や契約にも有利です。
- 有限責任: 会社の負債に対して、株主や経営者が負う責任は出資額に限られます。個人資産が保護されるため、リスク管理が容易です。
株式会社のデメリット
- 設立コストと手続きの複雑さ: 株式会社を設立するには、定款の作成や登記などの手続きが必要で、設立費用が個人事業主に比べて高くなります。設立コストは25万円ほどです。
※設立代行会社の利用で手続きは簡易に行うことができるようになっています。 - 運営の手間: 株主総会や取締役会など、株式会社には運営上のルールが多く、煩雑な事務作業が発生します。定期的に決算公告を行う義務もあります。
- 社会保険の加入が必須: 法人化すると、社長1人でも社会保険に加入する必要があり、保険料が高くなることがデメリットとなります。
- 赤字でも法人税がかかる: たとえ赤字でも、一定の法人税を支払う義務がある(均等割と呼ばれる最低額の税金が発生します)。
課税所得800万円あたりで法人化を検討する理由
課税所得が800万円では、個人事業主にかかる税率は23%ですが、法人税は15%に抑えられます。たとえ個人事業主の所得税控除を差し引いても、納税額は法人の方が低くなります。
さらに、課税所得が900万円を超えると個人事業主の税率は33%に跳ね上がりますが、法人税は23%にとどまるため、法人化することで大幅に税負担を軽減することが可能です。
消費税の免除とインボイス制度の影響
個人事業主でも法人でも、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。ただし、実際に消費税の納税が始まるのは、課税売上高が1,000万円を超えた2年後です。
消費税の納税義務が発生するタイミング
たとえば、2年前の課税売上高が1,000万円を超えた個人事業主は、今年から消費税を納めなければなりません。しかし、このタイミングで個人事業主から法人化を行えば、さらに2年間は消費税の納税が免除されます。この免除規定は、資本金1,000万円未満の法人にのみ適用されます。
状況 | 消費税の納税義務 |
---|---|
2年前の課税売上高が1,000万円以下 | 消費税の納税義務なし |
2年前の課税売上高が1,000万円超 | 今年から消費税の納税が必要 |
法人化(資本金1,000万円未満) | さらに2年間、消費税の納税免除 |
この免除規定を利用して、消費税の負担を抑えることができるため、タイミングを見計らって法人化を行うことが有効です。
2023年からのインボイス制度の影響
しかし、2023年10月より始まったインボイス制度に登録する場合、課税売上高の金額にかかわらず、課税事業者として扱われ、消費税の免除は受けられません。インボイス制度に登録すると、適格請求書の発行が求められるため、顧客や取引先からの信頼を維持するためには、課税事業者として対応することが必要になります。
消費税免除を最大限活用するためには、インボイス制度への対応も加味し、適切なタイミングで法人化を検討することが重要です。
社会保険への加入義務
法人化すると、社会保険への加入が必須となります。従業員がいなくても、社長1人の会社であっても、社会保険に加入する義務があります。これは費用面での負担が増えますが、国民健康保険や国民年金に比べて手厚い保障が得られるメリットもあります。
個人事業主と法人の税率の比較
以下に、個人事業主と法人の税率を比較します。
税金の種類 | 個人事業主(所得税) | 法人(法人税) |
---|---|---|
制度 | 累進課税率 | 比例税率 |
税率 | ・195万円以下:5%・195万円超330万円以下:10%・330万円超695万円以下:20%・695万円超900万円以下:23%・900万円超1,800万円以下:33%・1,800万円超4,000万円以下:40%・4,000万円超:45% | ・800万円以下:15%(適用除外事業者は19%)・800万円超:23.20%※資本金1億円以下の普通法人の場合 |
特に課税所得が800万円の場合、個人事業主は23%の税率ですが、法人化すると15%の税率で済みます。
さらに、900万円を超えた場合、個人事業主の税率は33%に上がりますが、法人税は23%となります。この税率の違いが、法人化を検討する大きなポイントとなります。
まとめ
現在、売上1000万円を超えた際の法人化のメリットは以前よりも減少していますが、所得が800万円頃から、法人化による税制のメリットが見えてきます。特に、課税所得が900万円を超えると税率が急激に上がるため、このタイミングでの法人化が推奨されます。
インボイス制度や社会保険への加入義務、赤字繰越制度なども踏まえて、自身の事業状況に踏まえた最適なタイミングで法人化を検討することが重要です。設立代行サービスを利用すれば、手続きの煩雑さを軽減し、スムーズに法人化を進めることができます。特に、所得が800万円を超える場合や、消費税の免除を最大限活用するためには、法人化のタイミングを計ることが事業の成長に大きな影響を与えるでしょう。
株式会社には、設立コストや運営の手間などのデメリットもありますが、所得が増加した段階での税制上のメリットやリスク管理のしやすさが、個人事業主に比べて大きな魅力です。自身の事業状況や将来の成長を考えながら、適切な選択を行いましょう。